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-永尾元佑氏 カネ駒 -
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最後の肥後守鍛冶 永尾元佑氏

懐かしさと共にどこかノスタルジックな雰囲気を醸しだす 「肥後守」 は、昔子どもだった世代にとって毎日の必需品でした。鉛筆削りに竹とんぼ、基地づくりにも大活躍。子ども達の遊びを通しての生活道具だった肥後守。鉛筆は、親指と人差し指を使って丁寧に削っていきます。鉛筆芯が円錐の中心にそびえるように整え、その円錐部分も短すぎると不格好。芯とのバランスを考えながら好みの長さに揃えます。筆箱に並んだ鉛筆は自分なりの作品でもありました。
平成になって以降、刃物に寄る事件事故が世間を騒がし刀狩りのように子ども達の暮らしからナイフ類は姿を消す事態となりました。激減する注文に製造者もまた、徐々に肥後守製造から一人二人と身を引くこととなり40以上あった肥後守製作所も現在は「カネ駒」永尾さんただ一人となりました。

永尾元佑氏は最後の「肥後守」製造者です。一番若かった永尾さんが後継者のないまま現在では最長老の73歳、唯一の肥後守鍛冶です。京都・九州からも弟子入り志願はあったようですが、すすで真っ黒になりながらこつこつ地道な作業を積み重ねることは、若い世代にとって思ったよりも過酷なようです。

手間を惜しまず きっちり叩く、鍛造する

本割込鍛造→荒研磨→との粉ぬり→焼入れ→背磨き→柄付け→水研磨→仕上げ刃付けと全ての工程が手作業で行われます。炎を上げる釜の中で熱せられた刃はみるみる赤く染まって行きます。その赤まり具合を確かめるのも長年培った職人の勘。金床でトンテンカンとちきり部分が叩かれます。刃の側を先にして再度火の中で赤々と熱せられます。次に刃先から根元・峰部分とトンテンカン。本割込鍛造された刃は荒研磨された後、焼入れです。赤められた刃が水につけられジュッと音を立てたとき刃物に魂が入るのです。最後の柄付け仕上げまで見事なまでのすべて手づくり。日本唯一の鍛冶屋としての誇りを感じます。

ステンレス製の型押しオートオートメーションとは違う、一つずつ微妙に形の異なる刃先。割込みをして本格的に鍛造した肥後守は、鋭い切れ味。
これが何とも言えない「オトナ気分」を味わえる子どもの頃の宝物だったのです。手をすべらせて指をかすめ痛さを体験する。その痛みを味わう事でケガをしない・させない扱い方を学んでいったものでした。

日本の優れた道具を後世に伝える

手作り品で数少ないことから、有名百貨店でしかみられなくなったカネ駒印の肥後守。一方で永尾さんはここ数年、市内の小学校を回って子ども達に肥後守の使い方などを指導しています。手を切っては危ないと触らせないでいるよりも、正しい使い方を知り全国に誇れる地場産業をもっと身近に感じて欲しいと思うからです。

永尾さんは「肥後守」の登録商標保持者です。初代駒太郎よりとって銘を「カネ駒」と定めました。柄に「肥後守」と「カネ駒」の刻印のあるものが本物の証。四代目永尾さんが一丁一丁手づくりで造り上げた作品です。後継者のないまま、消え行くにはあまりにも惜しまれる肥後守。三木から始まった肥後守の良さを見直す動きは、今や全国の小学校へと広がりを見せ日本の道具の素晴らしさは子ども達へと伝承されようとしています。

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