鋼を打つのみでは製品になった時ひずみが生じてきます。もう一度、打戻すことこそ鏝の善し悪しを決める滑らかで揺るぎのないラインをかもし出すのです。昔ながらの鋼を叩き伸ばす鍛造と焼入れ焼き戻しと全ての工程を杉田さんがこなします。腹からヘリへの流れは正に名人芸。本焼きの仕上がりは、自然の焼き模様がついて一つとして同じものがありません。ここにも手づくりならではの感動に出会います。
バランスの良さと手に馴染む鏝は、杉田作品のみと言っても過言ではなく、遠く県外からも噂を聞きつけ職人さんたちが「自分だけの鏝」を求めて来訪されることも多く、それぞれの用途や使う人の手の大きさなどによっても細かく要望に応えます。好みの形、希望する先巾、首の高さなど、1丁だけの注文にピッタリ合致した製品で返す姿勢こそ、製造者の心意気。長年積み重ねられた勘と経験とともに、職人さんの一生の片腕を造る気概を感じます。
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